パナマ経済(2018年6月報)

平成30年7月9日
在パナマ日本国大使館
担当:淡輪書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
主な出来事
●英エコノミスト社は、2018年のパナマのGDP成長率見通しを従来の5.8%から5.0%に下方改定。
●経済財務省は、7月1日付でデ・ラ・グアルディア経済財務大臣が辞任する旨発表。
●会計検査院は、本年第1四半期の実質GDPは103億10百万ドルで、前年同期比4.2%増加した旨発表。
●アロセメナ貿易産業大臣及びZhong Shan中国商務部長は、FTA交渉開始に関するMOUを北京において締結。
●パナマ運河庁は、LNG船の夜間通航及びLNG船同士の運河内での行き交いに係る規制を緩和することで、現在1隻/日とされている同船舶の通航予約枠に関し、他船種と競合する2隻目の枠を追加する旨発表。
●パナマ運河第四架橋建設計画の入札プロセスにおける経済提案の開札式が行われ、中国企業で構成されるコンソーシアム「Panama Cuarto Puente Integrado」が落札。
 

1.経済全般、見通し等

(1)英エコノミスト社によるGDP成長率見通しの発表
 英エコノミスト社は、2018年のパナマのGDP成長率見通しを従来の5.8%から5.0%に下方改定した旨発表。他方、2019年の見通しは従来の5.4%から5.9%に上方改定した。本年の下方改定については、ストライキの影響を受けた建設業の減速とその他セクターの低迷によるものだが、今後も運送、貿易及び金融業が牽引し、2019年以降はミネラパナマ社による銅の出荷も貢献すると見込んでいる。
 
(2)多国籍企業本部制度(SEM)の新規認定
 6日、貿易産業省は、多国籍企業本部制度(SEM)認定企業として、新たにいすゞ自動車、英JCバンフォード・エクスカベターズ、中国鉄路国際集団の3社を認定した旨発表。3社による初期投資合計額は約275万ドルで、約100人の新規雇用創出を計画している。なお、2007年の本制度開始以降、合計147社が認定されている。
 
(3)デ・ラ・グアルディア経済財務大臣の辞任
 経済財務省は、7月1日付でデ・ラ・グアルディア経済財務大臣が辞任する旨発表。同省の発表によれば、同大臣は、民間部門に復帰するが、「バレーラ政権を(これまでとは)異なる立場から支援し続ける」としている。同大臣は、本年1月よりバレーラ大統領へ辞任意思を伝えており、6月上旬に正式に決定された。
 
(4)AESパナマ社によるLNGの受け入れ
 AESパナマ社は、同社がコロン県にて運営するLNG火力発電所(発電容量381MW)向けの燃料として、LNGの受け入れを開始した旨発表。同発電所では既に試運転が開始されているが、貯蔵タンク(容量18万立米)が完成していないため、LNG船を45日間程度に亘り岸壁に係留させ、徐々にLNGの払い出しを行う予定としている。
 

2.経済指標

(1)第1四半期(1月~3月)の実質GDP
 会計検査院は、本年第1四半期の実質GDPは103億10百万ドルで、前年同期比4億19百万ドル(4.2%)増加した旨発表。2016年と2017年の同期比では6.1%増、2017年通期の成長率は5.4%で、景気減速感が漂う。なお、運送、倉庫、通信業は5.2%増、建設業は4.9%増(ストライキは第2四半期に発生)と好調であったが、その他業種が低調。
 
(2)1月~3月期のパナマに対する海外直接投資
 会計検査院は、1月~3月のパナマへの海外直接投資が10億99百万ドルで、前年同期比2億25百万ドル(17.0%)減少した旨発表。なお、2017年のパナマへの海外直接投資は前年比1.8%増の53億19百万ドルで、GDP比8.6%であった。
 
(3)4月末時点の公的債務残高
 経済財務省は、4月末時点の公的債務残高が248億ドルで、前年同月比28億77百万ドル(13.1%)増加した旨発表。その内、海外借入は196億54百万ドル、国内借入は51億45百万ドルであった。
 
(4)1~4月期の新車販売台数
 会計検査院は、1月~4月の新車販売台数が17,099台で、前年同期比1,787台(9.5%)減少した旨発表。車種別では、普通乗用車は17.6%減、SUV車は6.4%減、トラックは14.1%減、ピックアップ車は4.0%増であった。本年2月及び3月期は前年同期比で2ケタ以上の減少であったが、4月単月では前年同月比3.7%減となった。
 
(5)1~4月期のコロンフリーゾーン取扱高
 コロンフリーゾーン庁は、1月~4月のコロンフリーゾーン取扱高が71億65百万ドルで前年同期比8億63百万ドル(13.7%)増加した旨発表。輸入額は33億14百万ドル、再輸出額は38億51百万ドルで、主に家電製品、薬品、化学品、化粧品及びアルコール飲料等の取扱いが好調であった。
 
(6)5月期の消費者物価指数
 会計検査院は、5月の消費者物価指数が105.3で、前年同月比0.8%増加した旨発表。特に燃料費の高騰を受け運送費が3.8%増加した他、教育が3.7%、レストラン・ホテルが2.7%増加した。他方、食品・飲料は1.5%、被服・靴は1.0%、通信は0.8%減少した。
 

3.通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)バレーラ政権4年間の活動報告
 1日、外務省は、バレーラ政権4年間の成果等に関するサイン・マロ副大統領兼外務大臣の報告を発表。経済面については、金融分野における透明性確保及び国際協調向上のために積極的な活動を行い、(1)租税分野におけるEUの非協力国リストからパナマを除外させることに成功、(2)パナマに対して差別的措置を適用する国のリストを公表したことを挙げた。
 
(2)STCW条約に関するベルギーとの合意
 11日、パナマ海事庁は、STCW条約附属書第1-3及び第1-10規則に基づき、パナマ人船員の資格証明書の承認に関してベルギー海事当局と合意した旨発表。同庁は、STCW条約を遵守し、パナマ人船員の雇用機会を促進するとともに、パナマ及びベルギー間の海事技術協力関係を強化する旨発表した。
 
(3)バレーラ大統領のロシア訪問
 13日、バレーラ大統領は、プーチン大統領と首脳会談を行い、両首脳は、貿易、観光、文化及び学術分野での交流を促進する重要性につき協議した。また、同大統領は、アエロフロート航空幹部と会合し、両国首都間の直行便就航の可能を追求するための協議を開始する旨述べた。
 
(4)中国とのFTA交渉開始に関するMOU締結
 13日、アロセメナ貿易産業大臣及びZhong Shan中国商務部長は、FTAの交渉開始に関するMOUを北京において締結した。交渉の第1ラウンドは7月9日から13日にかけてパナマで開催される予定。なお、2018年のパナマから中国への輸出額は42百万ドルである。
 
(5)中国浙江省による貿易エキスポの開催
 14日から16日にかけて、中国浙江省国際貿易促進委員会とパナマ商工会議所は、「Quality China 2018 Zhejiang Expo」を開催。浙江省より建設資材、自動車部品、電気関係部品、宝飾品及び服飾等を取り扱う70社以上の企業が参加した。
 
(6)豪州、ヨルダン、パレスチナ及びガーナにおける在外公館開設
 27日、外務省は、豪州、ヨルダン、パレスチナ及びガーナにて新規に在外公館を開設する旨発表。経済面については、パナマへの海外投資の増加及び国際経済におけるパナマの役割強化を目指す。新たに任命される大使等は、SEM制度を利用したパナマへの企業進出、コロンフリーゾーンの利用増加、並びに再生可能エネルギー、技術及び物流分野における投資誘致を促進する。
 

4.パナマ運河

(1)拡張パナマ運河の運用開始から2年間が経過
 26日、拡張パナマ運河(第三閘門)が運用開始されてから2年間が経過。この2年間に第三閘門を通航したネオパナマックス船は、3,742隻、同通航に係るパナマ運河庁の収入は19億6,2百万ドルとなった。
 拡張パナマ運河開通等の影響により、2017会計年度は通過貨物量が前年度比22%増加、2018会計年度も5~6%の増加が見込まれ、2018会計年度におけるパナマ運河庁の総予算は30億37百万ドル、内、国庫納付額は16億59百万ドルが計上されている。
 
(2)LNG船通航予約枠の拡大
 27日、パナマ運河庁は、LNG船の夜間通航及びLNG船同士の運河内での行き交いに係る規制を緩和することにより、現在1隻/日とされている同船舶の通航予約枠に関し、他船種と競合する2隻目の枠を追加する旨発表。この緩和により、ガトゥン湖でのLNG船同士の行き交いが可能となる。現在、パナマ運河庁は、通航予約できなかったLNG船に、実際の運用において通航可能な枠があればタイムリーな調整を行うことで予約が無いまま通航させる等の柔軟な運用を行い、1日に2隻を同方向に通航させることがあるが、同柔軟な運用と併せて最大で3隻/日の通航が可能となる。
 

5.インフラ関連

(1)パナマ運河第四架橋建設計画の入札評価
 29日、パナマ運河第四架橋建設計画の入札プロセスにおける経済提案の開札式が行われ、China Communications Construction Company及び China Harbour Engineering Company(いずれも中国企業)で構成されるコンソーシアム「Panama Cuarto Puente Integrado」が落札した。
 同入札プロセスについては、6月8日に公共事業省が、当初の技術評価委員会が提出した評価結果を無効とし、かつ、新たに構成する技術評価委員会が改めて技術評価を行う旨を公表し、その動向に関心が寄せられていたところである。
今般、新たな技術評価委員会による技術評価では、Dragados,S.A.(スペイン)が最高得点となる49.07%を獲得し、経済提案に対する評価も含む総合評価でも最高得点となる79.84%を獲得したが、同社は既に入札を辞退していたため、落札者とはならなかった。
 また、イタリア企業と韓国企業が組むコンソーシアムAstaldi-DAELIMも、技術評価において46.64%で第2位となる評価を受けたが、同者の経済提案額は公共事業省が設定した参考価格の±20%の許容範囲内を下回ったため、「危険」と見なされ落札できず、結局、技術評価において30.99%で第3位となる評価を受けた上記中国企業が組むコンソーシアムが落札する結果となった。
 落札できなかった各者による異議申立期間として3営業日が与えられるが、異議申立が無ければ、同落札者との受注契約に向けた手続きが進められる。
 なお、各者の技術評価及び経済評価等の詳細は以下のとおり。
●コンソーシアムPanama Cuarto Puente integrado
 ・技術評価 :30.99%
 ・経済提案額:1,420百万ドル
 ・総合評価 :69.99%(落札)
●Dragados,S.A.
 ・技術評価 :49.07%
 ・経済提案額:1,812百万ドル
 ・総合評価 :79.84%(最高点を獲得するも、同者は入札辞退)
●Astaldi-DAELIM
 ・技術評価 :46.64%
 ・経済提案額:1,211百万ドル(危険との判定)
 ・総合評価 :-
●Cuarto Puente CSCEC - CREC
 ・技術評価 :失格
 ・経済提案額:-(技術評価で失格となったため、未開札)
 ・総合評価 :-
※公共事業省が設定した参考価格:1,607百万ドル
(±20%となる1,286百万ドル~1,929百万ドルが許容範囲)
 
(2)メトロ2号線延伸区間整備計画に係る入札
 21日、パナマ・メトロ公社は、トクメン空港第2ターミナルに至るメトロ2号線延伸区間整備計画に係る入札の提案期限を7月25日から8月30日に変更した。また、工期も24か月間から28か月間に延長することとなった。
 

6.経済指標は別添資料をご参照下さい。