パナマ経済(2018年5月報)

平成30年6月8日
在パナマ日本国大使館
担当:淡輪書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019

主な出来事
●国連中南米カリブ経済委員会は、2017年の域内コンテナ港湾全120港のランキングを発表し、1位はパナマ・コロン港となった。
●SUNTRACS及びCAPACは、本年7月1日から2021年12月31日までの包括労働協約について合意した。
●バレーラ大統領はネタニヤフ・イスラエル首相と首脳会談を行い、その際FTA及び農業分野における覚書への署名が行われた。
●貿易産業省は、中国とのFTA交渉の開始について、6月12日に北京で正式発表され、7月にパナマで交渉第1ラウンドが始まる見通しである旨発表した。
●パナマ運河庁は、パナマ運河第三閘門における1日当たりの通航予約枠を従来の7隻から8隻に増加した。
 

1.経済全般、見通し等

(1)米国AES社によるLNG火力発電所建設
米国AES社は、同社がコロン沖にて建設中の中米初のLNG火力発電所建設工事の進捗率は98%で、本年9月1日より発電を開始する旨発表。総工費は11億50百万ドルで、発電所(発電容量381MW)に加え、LNG貯蔵タンク(容量18万立米)が併設される。なお、タンク容量の25%は自家発電用で、残り75%は販売用となる見込み。

(2)ネスレ社による物流及び調達センターの拡張
スイス・ネスレ社は、既存の物流センターの拡張で20百万ドル、調達センターの拡張で5百万ドルの総額25百万ドルの新規投資を行うことを発表。域内でのビジネス拡大に伴い、既存施設では手狭になったことが背景にある。本投資により、新たに200名の雇用増加に寄与する。同社は、物流及び調達センターをスイス、パナマ及びマレーシアで展開している。

(3)CEPALによるコンテナ港湾ランキングの発表
国連中南米カリブ経済委員会(CEPAL)は、2017年の域内コンテナ港湾全120港のランキングを発表。1位はパナマ・コロン港(マンサニージョ港、コロン・コンテナターミナル、クリストバル港)で3,891,209TEU、2位はブラジル・サントス港で3,578,192TEU、3位はパナマ・バルボア港で2,986,617TEU。2015年及び2016年はサントス港が1位でコロン港は2位であったが、2017年はコロン港がトップとなった。2017年の域内120港の取扱量は5,060万TEUで、国際貿易の活発化により前年比6.1%増加した。

(4)SUNTRACS及びCAPAC間の労働争議の終結
建設労働者組合(SUNTRACS)及び建設業団体連合会(CAPAC)は、本年7月1日から2021年12月31日までの包括労働協約について合意した。SUNTRACSによるストライキは約30日間(4月18日~5月18日)でその間の経済損失は約9億ドル。2021年末までの労働者の給与増加率は、民間プロジェクトは累計14%、政府による公共プロジェクトは累計18%、メガプロジェクトは累計44%である。

(5)ルフトハンザ航空による直行便の増便
ルフトハンザ航空は、2年前に就航を開始したフランクフルト・パナマ間の直行便を本年11月3日より週1便増便し、週6便とする旨発表。
 

2.経済指標

(1)3月期の財政赤字額
経済財務省は、非金融公的部門における3月の財政赤字額は5億69百万ドルで、予想名目GDPの0.9%である旨発表。収入は27億46百万ドルで、前年同期比18百万ドル(0.6%)微減。他方、支出は33億15百万ドルで、人件費等の増加により前年同期比7億66百万ドル(30.1%)の大幅増となった。

(2)1~3月期の新車販売台数
会計検査院は、1月~3月の新車販売台数が12,617台で、前年同期比1,613台(11.3%)減少した旨発表。なお、車種別では、セダンが21.5%と大きく減少、これまで比較的堅調であったSUVも8.5%減少している一方、高級車の分類は2.7%増加している。

(3)1月~3月期の輸出総額
会計検査院は、1月~3月の輸出総額が1億70百万ドルで前年同期比16百万ドル(10.1%)増加した旨発表。バナナ、鮮魚・冷蔵・冷凍魚及び木材等の輸出が好調であった。

(4)1月~2月期の外国人観光客
会計検査院は、1月~2月の外国人観光客数が483千人で、前年同期比8千人(1.5%)減少した旨発表。乾期の観光シーズンにも関わらず低調で、同期の平均ホテル稼働率も48.8%と前年同期比2.3%下落した。

(5)2月期の基礎食料品バスケット
経済財務省は、2月の基礎食品バスケットが、パナマ市及びサンミゲリート市において、302.65ドルで、前月比0.59ドル下落、前年同月比4.85ドル下落した旨発表。2017年10月期以降本年1月まで4ヶ月連続で上昇していたが反転した。
 

3.通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)ベンカイア・ナイドゥ・インド副大統領のパナマ訪問
8日から10日にかけて、バレーラ大統領は、ベンカイア・ナイドゥ・インド副大統領を迎え首脳会合等を行った。インド側は、パナマによる科学技術・革新分野での中南米のハブ機能の強化に向け、科学技術及び英語における能力構築のため教育分野での交流を実施する旨述べた。また、パナマ側は、インド企業のパナマ進出及び政府のインフラ事業に参加するよう要請すると共に、インドの中南米進出に際し、パナマが有するゲートウエイとしての地理的条件及び物流プラットフォームの優位性を強調した。

(2)バレーラ大統領の英国訪問
14日、バレーラ大統領は、メイ英首相と首脳会談を行った。メイ首相は、英企業へ中南米地域における玄関口を提供しているパナマの戦略的重要性を高く評価するとともに、両国の貿易関係を強化し続けるべきである旨述べた。また、バレーラ大統領は、セキュリティー、税務及び教育等の分野におけるグッドプラクティスの共有に言及し、両国の関係をより強固かつダイナミックにすることが利益につながる旨強調した。また、同大統領は、ハモンド英財務大臣と租税回避及び非合法な資金の移転等国際的な課題への対応についても協議した。

(3)バレーラ大統領のイスラエル訪問
17日、バレーラ大統領は、ネタニヤフ・イスラエル首相と首脳会談を行った。ネタニヤフ首相は、国際物流のハブであるパナマに言及し、世界経済におけるパナマの地政学的要衝及びパナマ運河の重要性を強調した。バレーラ大統領は、テクノロジー、農業、水処理、教育及びセキュリティー等の分野におけるイスラエルのこれまでの援助に対し、ネタニヤフ首相へ感謝の意を伝えた。また、農業、イノベーション及び水処理等の分野における非熟練労働者への研修におけるイスラエルの知見を活かしたい旨述べた。また、その際二国間の自由貿易協定(FTA)及び農業分野における覚書への署名が行われた。本FTAは,パナマにとって中東の国と合意した初めての協定で、イスラエルにとっては中南米の国と合意した3番目の協定。また、本覚書は、イスラエルの助言によりパナマ産品の質及び量の向上を可能とするパナマ農業センターの建設に関するもので、同センターは、ロス・サントス県に建設される予定であり、総工費250万ドル、敷地面積は7ヘクタールに及ぶ。

(4)中国との海事協力協定の発効
17日、パナマ及び中国の両政府が締結した海事協力協定が発効。本協定により、
パナマは「最恵国待遇」を享受し、パナマ籍船は中国の港湾に寄港する際のトン税の優遇レートが適用される他、船員免許の相互承認や互いの港に寄港する際の船員の臨時下船なども可能となる。

(5)中国とのFTA交渉の開始
25日、貿易産業省は、中国との自由貿易協定(FTA)交渉の開始について、6月12日に北京で正式発表され、7月にパナマで交渉第1ラウンドが始まる見通しである旨発表。同省は、主要民間業界であるパナマ経営者協会、パナマ商工会議所、パナマ輸出者協会及びパナマ農牧業協会等との協議を開始した。また、バレーラ大統領は、本FTA交渉の首席交渉官として、アレマン・パナマ貿易投資促進機関(PROINVEX)代表を任命した。
 

4.パナマ運河

(1)第三閘門の1日当たりの通航予約枠が8隻に増加
7日、パナマ運河庁は第三閘門における1日当たりの通航予約枠を従来の7隻から8隻に増加した。2018運河庁会計年度(2017年10月1日から開始)における同日までの期間に同閘門を通航したネオパナマックス船は1,183隻、前年度同期比39%の増加であり、予約枠の増加はこの増加傾向に対応するものである。なお、報道によると、増加された1枠はLNG船ではなく、パナマ運河のスムーズな通航をより必要とするクルーズ船や生鮮食品を輸送する船舶等に割り当てられる。
また、パナマ運河庁は、6月1日より同閘門を通航する船舶の許容船幅を49mから51.25mに拡大する旨も併せて報告した。

(2)過去最大規模のクルーズ船の通航
14日、これまでにパナマ運河を通航したクルーズ船の中では最大規模となるNorweigian Bliss社のクルーズ船がパナマ運河を通航。同船舶の諸元は、全長325.9m、全幅41.4m、喫水8.3mであり、旅客定員数は約5千人規模である。

(3)ネオパナマックス船の通航を支援するタグボートの船長の削減
パナマ運河庁は、7月1日よりネオパナマックス船の通航を支援するタグボートの船長を現在の2名から1名に削減することを決定。同タグボートの体制は、船長2名、機関士1名及び乗船員2名であるが、船長は1名で十分であるとの判断がなされた。同体制に関し、4月12日には、従来の乗船員数3名を2名に削減する決定がなされ、同決定に反対する複数の船長が職務放棄し問題になったばかりであり、更なる体制変更に対する反応が注目されている。
 

5.インフラ関連

(1)第四送電線の建設計画
国営送電公社(ETESA)は、第四送電線建設計画の入札に向けた事前資格審査の要件を決定。要件の内容は、(1)高圧送電線の建設実績、(2)現在運営を行っている送電線の総延長、(3)現在送電線の運営を行っている案件数、(4)送電線の建設及び運営実績のある国及び(5)ファイナンス条件の5件。落札企業は、送電線の設計、建設、ファイナンス及び運営を担い、BOT(Build, Operate and Transfer)方式で20年間運営される見通し。2019年第1四半期に建設開始、2022年第1四半期より運営開始予定。本送電線の総延長は317kmで、総工費は5億20百万ドル。6月13日に本案件に関心を有する企業への説明会、7月12日に事前資格審査に関する資料を提出するスケジュールとなっている。

(2)メトロ2号線延伸事業の入札公示
7日、メトロ公社は、トクメン国際空港まで至るメトロ2号線の延伸区間に係る建設事業の入札を公示。同事業の延長は約2kmで2駅の建設も含まれ、工期は24か月である。入札提案書の締切は6月25日で、5月17日に開催された入札説明会には8社が参加して関心を表明している。

(3)パナマ運河第四架橋建設計画に係る政府予算の動向
28日、パナマ政府が2018年の政府予算においてパナマ運河第四架橋建設計画に割り当てていた予算175百万ドル(ママ)の内、100百万ドルを他事業(道路、上下水道の補修等)に移し替える決定を行った旨報じられた。同報道によれば、ゴンサレス大統領府特命事務局長は、同計画の入札提案が昨年10月に実施されたものの未だ着工には至っておらず、2018年中の同計画に必要な予算は残りの75百万ドルで十分である旨述べている。また、同事務局長は2019年の政府予算において同年に必要な予算が割り当てられる旨も述べている。今後、同移し替えを実行するためには議会の予算委員会での承認を得る必要がある。
 

6.経済指標は別添資料をご参照下さい。