パナマ経済(2018年4月報)

平成30年5月16日
在パナマ日本国大使館
担当:淡輪書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019

主な出来事
●CEPAL及びIMFは、2018年のパナマのGDP成長率見通しをいずれも5.6%と発表。
●中国国際航空は、北京・パナマシティ便(ヒューストン経由)の就航を開始。
●パナマ及びベネズエラ政府は、互いに召還していた駐在大使を任国へ戻し、両国間の航空便を再開すること等で合意したとする共同声明を発表。
●バレーラ大統領は、パナマ・チリキ間鉄道事業に関するフィージビリティ・スタディの調整を目的とするハイレベル委員会を設置。
 

1.経済全般、見通し等

(1)GDP成長率見通しの発表
(イ)国連中南米カリブ経済委員会(CEPAL)は、2018年の域内33か国のGDP成長率見通しを発表。パナマは前年比0.2%増の5.6%で域内トップ、次いでドミニカ共和国5.0%と続き、域内各国の平均成長率見通しは前年比1.0%増の2.2%。
(ロ)国際通貨基金(IMF)は、パナマのGDP成長率見通しとして、2018年がCEPALと同様に前年比0.2%増の5.6%、2019年が5.8%で、引き続きラ米トップである旨発表。背景として、運河も含めた好調な運輸業及び物流業に加え、堅調なインフラ投資を挙げている。なお、IMFは、インフレ率見通しも発表しており、国際的な食料価格の上昇、原油価格の安定及び国内の最低賃金上昇に伴い、2018年が2.2%、2019年が2.5%に上昇する旨予想。

(2)中国国際航空による中国・パナマ間の直行便就航
5日、中国国際航空は、北京・パナマシティ直行便(ヒューストン経由)の就航を開始し、北京からの第一便がトクメン国際空港に到着。同空港では、バレーラ大統領、イム観光庁長官、シャン当地中国大使及びカオ中国国際航空副社長出席の下、記念式典が行われた。現状週2便の運航だが、パナマ民間航空庁は最大で週4便の運航を許可している。
 

2.経済指標

(1)2017年1月~12月期の住宅販売件数
住宅促進協会は、2017年の住宅販売件数が7,219件、総額が8億22百万ドルで、前年同期比1億93百万ドル(19%)減少した旨発表。世界経済と国内経済の失速及び住宅ローンの審査の厳格化等が要因であるとしている。

(2)1月期の基礎食料品バスケット
経済財務省は、1月の基礎食品バスケットが、パナマ市及びサンミゲリート市で、前月比0.54ドル増の303.24ドルであった旨発表。2017年10月期以降4ヶ月連続での増加となった。

(3)1月~2月期の輸出総額
会計検査院は、1月~2月の輸出総額が1億3百万ドルで前年同期比9百万ドル(9.1%)増加した旨発表。主要輸出品であるバナナは同23.9%増の15百万ドル、鮮魚・冷蔵・冷凍魚は62.1%増。他方、メロンは91.4%減、未精製糖は85.3%減、魚粉・魚油は73.2%減、スイカは45.9%減、エビは6.5%減、パイナップルは1.4%減となった。

(4)3月末時点の公的債務残高
経済財務省は、3月末時点の公的債務残高が236億73百万ドルで、前年同月比17億10百万ドル(7.8%)増加した旨発表。

(5)1~3月期のコロンフリーゾーン取扱高
コロンフリーゾーン庁は、1月~3月のコロンフリーゾーン取扱高が52億92百万ドルで前年同期比5億22百万ドル(10.9%)増加した旨発表。輸入額は24億27百万ドルで、相手先は、米国、中国、メキシコ、シンガポール及び香港等。他方、再輸出額は28億66百万ドルで、相手先は、米国、コロンビア、コスタリカ及びドミニカ共和国等である。
 

3.通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)ベネズエラとの関係正常化
3月27日のパナマによる資金洗浄等に係るベネズエラ・ハイリスク・リストの発表及びこれに対するベネズエラによる対抗措置以降、両国間の航空便の停止及び両国の駐在大使の召還等、両国関係は悪化。その後、両国間にて協議を継続してきたところ、26日、両国政府は、互いに召還していた駐在大使を任国へ戻し、両国間の航空便を再開すること等で合意したとする共同声明を発表。

(2)バレーラ大統領の米州首脳会合出席
14日、バレーラ大統領は、ペルーで開催された米州首脳会合に出席し、その際複数の二国間会合を行った。
(イ)マクリ・アルゼンチン大統領と首脳会談を行い、航空及び海運分野の接続性の強化、農産物輸送、観光促進及び金融システムの強化等について協議。両首脳は、上記分野における協力を推進するため外相会合を実施することに合意した。
(ロ)メディーナ・ドミニカ共和国大統領との会談において、両首脳は、観光、貿易及び治安分野における関係強化について協議。
(ハ)ミニス・バハマ首相との会談では、航空路線のハブとしてのパナマを活用し、中国、アジア太平洋地域、将来的には中東からバハマへの観光客を増加させるため、観光計画を共同策定することに合意。

(3)バラカット海事庁長官の訪日
9日から13日まで、バラカット海事庁長官は日本を訪問し、東京都内で開催された国際海事展「SEA JAPAN2018」への出席に併せ、日本船主協会と会談した。同長官は、日本船主協会との会談において、船舶からの温室効果ガス(GHG)削減目標に対する国際海事機関(IMO)での戦略採択への協力や、シップリサイクル条約の早期発効に向けた働き掛け等について協議した。

(4)キハーノ運河庁長官の訪日
16日から19日まで、キハーノ運河庁長官は日本を訪問し、国土交通省、経済産業省及び資源エネルギー庁への表敬の他、日本船主協会及びLNG荷主企業等との会談を行った。同長官は、日本船主協会及びLNG荷主企業等との会談において、今後米国からのLNG輸出が活発化する中で、LNG船の運河通航量の拡大等について協議した。また、NHK及び日本経済新聞等の単独インタビューを受けた。
 

4.パナマ運河

(1)タグボート船長の職務放棄による運河通航麻痺
12日、ネオパナマックス船を曳航するパナマ運河庁のタグボートの船長が職務を放棄したため、5隻の運河通航に遅れが生じた。2016年にパナマ運河第三閘門の運用開始以降、タグボートは船長1名、機関士1名及び乗船員3名の体制で運用されてきたが、同日から乗船員を2名に減じる措置が適用されることが予定されており、同適用が影響したものと見られる。現在、同職務放棄に関与した複数の船長の処遇について検討がなされている他、パナマ運河庁は運河通航に遅延が生じた5隻を運航する船会社に3万5千ドルを返金した。

(2)米国におけるLNG生産量の見通し
キハーノ運河庁長官は、米国におけるLNG生産が増加し、2020年には昨年(2017会計年度)の5倍以上のLNG貨物が通過する見込みである旨述べた。この要因として、アジアにおける輸入需要の増加等が挙げられている。なお、2018年における米国のLNG輸出量は1,100万トンが見込まれているが、2019年には2,000万トンにまで増加する見込み。

(3)LNG船の3隻連続通航
17日、LNG船が3隻連続してパナマ運河第三閘門を通航。同3隻はいずれもオーシャン・パシフィックが運行する船舶である。同日時点における第三閘門の予約枠は7隻で、内1隻のみがLNG船に割り当てられているが、利用者は今後の米国発LNG船の通航数増大を見据えた同枠の増加を求めている。これに対し、パナマ運河庁ではLNG船の需要が多い日は2隻を通航させる柔軟な運用を実施しているが、今回のように1日に3隻を通航させたのは初めてのことである。
 

5.インフラ関連

(1)鉄道建設のためのハイレベル委員会の設置
25日、バレーラ大統領は、パナマ・チリキ間鉄道事業に関するフィージビリティ・スタディの調整を目的とするハイレベル委員会を設置。同委員会は、オスカル・ラミレス工学士を委員長とし、大統領府大臣、外務大臣、経済財務大臣、住宅大臣、公共事業大臣、環境大臣及び国営送電公社総裁等により構成され、中国政府により指名された機関との連絡・調整を担う。本件事業は、昨年のバレーラ大統領による中国訪問後の12月7日、中国政府がF/Sの実現のための無償資金協力を約束する旨の協力合意文書に署名がなされていたもので、現在、同F/Sが実施されているところである。

(2)高速道路公社(ENA)の増収
2017年の高速道路の収入が前年から12%増加し1億70百万ドルとなった。内訳は、コレドール・ノルテが前年から6%増加の81.7百万ドル、コレドール・スルが12%増加の71.9百万ドル、コレドール・エステが57%増加の16.5百万ドル。
 

6.経済指標は別添資料をご参照下さい。