パナマ経済(2018年3月報)

平成30年4月17日
在パナマ日本国大使館
担当:淡輪書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019
主な出来事
●経済財務省は、2018年のGDP成長率見通しを5.6%と発表。
●「パナマ文書」の流出元である法律事務所モサック・フォンセカが3月末に閉鎖。
●会計検査院は、2017年の実質GDPが401億77百万ドル、名目GDPは618億38百万ドルと発表。
●経済財務省は、資金洗浄等に係るベネズエラ・ハイリスク・リストを発表。
●パナマ運河庁は、2017会計年度の決算を公表。
 

1.経済全般、見通し等

(1)GDP成長率見通しの発表
経済財務省は、2018年のパナマのGDP成長率見通しは5.6%で、2017年実績の5.4%を若干上回る旨発表。但し、この見通しは、世界経済の堅調な推移による国際貿易の回復と、米中貿易摩擦の収束が前提であるとしている。

(2)コロンにおける暴動
13日、コロンで発生した暴動により、ロジスティック企業等が影響を受け、一部では通常の30%程度しか稼働できない状況となった。コロン・フリーゾーン庁は、通常同フリーゾーンでは1日当たり800TEUのコンテナが出入りするが、13日は253TEU、14日は約300TEUしか出入りしていない旨発表。

(3)パナマ文書の流出元の閉鎖
14日、世界の政治家や有名人の租税回避の実態を明らかにした「パナマ文書」の流出元である「モサック・フォンセカ」法律事務所が3月末に閉鎖する旨発表。同事務所は、風評被害やメディアによるネガティブキャンペーン、パナマ当局の尋常ではない行動などにより取り返しのつかない損害を受けた旨の声明を発表した。

(4)ミネラ・パナマ社における労働争議
15日、ミネラ・パナマ社によるコブレ・パナマ銅鉱山開発は、一連の労働争議を受け労働開発省より5日間の工事停止を命じられたが、20日の労使合意により、労働者によるストライキが終結した。現時点での開発工事の進捗は77%で、2019年の生産開始を予定している。
 

2.経済指標

(1)2017年1月~12月期のGDP
会計検査院は、2017年の実質GDPが401億77百万ドルで前年同期比20億43百万ドル(5.4%)増加、名目GDPは618億38百万ドルで前年同期比40億17百万ドル(6.9%)増加した旨発表。運河の通航料収入等の増加により、運輸・倉庫・通信業が10.1%増と大幅伸長。また、メトロ2号線、パナマ運河第三架橋、コロン県の銅鉱山及び天然ガスプラントの建設等で、建設業及び鉱業が共に8.3%増となり、成長を牽引した。

(2)2017年1月~12月期の公的債務返済額
経済財務省は、2017年の公的債務返済額が30億14百万ドルで前年同期比2億51百万ドル(9.1%)増加した旨発表。内訳は、元本返済が18億83百万ドルで前年比1億57百万ドル増加、金利が11億31百万ドルで前年比94百万ドル増加。平均借入コストは、2017年が4.80%で、2016年の4.83%から若干低減した。

(3)2017年1月~12月期のパナマに対する海外直接投資
会計検査院は、2017年のパナマに対する海外直接投資が53億19百万ドルで前年同期比94百万ドル(1.8%)増加した旨発表。但し、2016年は前年比16.2%増加しており、大きく失速した。

(4)1~2月期の新車販売台数
会計検査院は、1月~2月の新車販売台数が7,843台で、前年同期比925台(10.5%)減少した旨発表。販売台数が大きく失速した2017年から、更に減少傾向にある。

(5)1~2月期のコロンフリーゾーン取扱高
コロンフリーゾーン庁は、1月~2月のコロンフリーゾーン取扱高が33億40百万ドルとなり、前年同期比2億19百万ドル(7.0%)減少した旨発表。輸入額は15億51百万ドルで、相手先は、米国、中国、メキシコ及びシンガポール等。他方、再輸出額は17億89百万ドルで、相手先は、米国、コロンビア、コスタリカ、グアテマラ及びドミニカ共和国等である。
 

3.通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)パナマに対して差別的措置を適用する国のリストの公表
9日、経済財務省、外務省及び貿易産業省は、パナマに対して差別的または制限的措置を適用する20か国のリストを初めて公表した。対象国は、ブラジル、チリ、コロンビア、エクアドル、エルサルバドル、ペルー、ウルグアイ、ベネズエラ、クロアチア、スロベニア、エストニア、仏、ギリシャ、リトアニア、ポーランド、ポルトガル、カメルーン、ジョージア、露及びセルビア。

(2)バレーラ大統領のコスタリカ訪問
21日、バレーラ大統領は、ソリス・コスタリカ大統領と首脳会談を行った。経済関連については、麻薬密輸、組織犯罪、貨物輸送の迅速化、地域経済の強化及び税関手続きの効率化等が話し合われ、コスタリカ政府は、パナマが中国の支援により建設する予定の旅客貨物鉄道に関心を示した。

(3)中国人民銀行総裁のパナマ訪問
22日、バレーラ大統領及びサイン・マロ副大統領兼外務大臣は、習小川(Zhou Xiaochuan)中国人民銀行総裁を迎え、投資戦略、金融面における相互協力及び国内政策の強化について懇談を行った。同機会に、パナマに30年以上前に中国銀行が当地に進出を果たしたこと、また、世界最大の銀行である中国工商銀行(ICBC)の当地進出が予定されていることが強調された。なお、昨年のバレーラ大統領の訪中の機会に、パナマ政府と中国輸出入銀行及び国家開発銀行との間で、パナマでの支店開設を見据えた合意が署名されている。

(4)バレーラ大統領のヨルダン訪問
26日から28日にかけて、バレーラ大統領は、アブドッラー・ヨルダン国王と会談を行った。経済関連について、両首脳は、物流、観光、エネルギー、海事及び航空に関する協定のための交渉に向けたロードマップを強調し、二国間関係強化の必要性において一致した。また、バレーラ大統領は、ヨルダンからラテンアメリカ市場へのアクセスのため、パナマの物流ハブ機能及びコロン・フリーゾーンを紹介した。

(5)資金洗浄等に係るベネズエラ・ハイリスク・リストの発表
27日、経済財務省は、「資金洗浄、テロ及び大量破壊兵器への融資対策委員会」が作成した、ベネズエラの個人及び法人に係るハイリスク・リストを公表した。同リストは、金融機関(銀行等)及び非金融機関(弁護士等)に対し、ベネズエラの個人及び法人に関わる取引等において、十分且つ適切な注意を喚起し、あらゆる手続きを進めるよう勧告している。なお、同リストには、マドゥーロ大統領の他、ディオスダード・カベ-ジョ(チャベス政権時代のナンバー2)、ルセナ全国選挙評議会長、サアブ検事総長等の政府要人等を含む55人及び16法人が含まれる。
 

4.パナマ運河関連

(1)2017会計年度におけるパナマ運河庁決算
パナマ運河庁は、2017会計年度(2016年10月1日~2017年9月30日)の決算を公表。総収入は前年度から3億83百万ドル増の28億86百万ドルとなった。うち、通航料収入は22億38百万ドルで、その他は上水及び電力販売に伴う収入等である。一方、上記収入から運河運営費を除く直接国庫納付額は16億50百万ドルとなった。

(2)パナマ運河の運用等に必要な水需要
パナマ運河庁は、パナマ国内には必要な水量を確保するために52の流域が存在するものの、25.8%の水量のみが使用され、残りの74.2%は太平洋及び大西洋に直接流出している旨報告した。現在、近年の水の需要増加に応えるため、バヤノ、アスエロ、ベラグアス及びインディオ川エリアにおける新たな水源確保に係るフィージビリティ・スタディを他機関と連携して実施中。
 

5.インフラ関連

(1)アライハンにおける下水処理プラントの建設
保健省は、アライハンにおける下水処理プラントの設計、建設、運営を含む案件をコンソーシアムPTAR Arraijanに発注した。同案件の総費用は1億2040万ドルで、約8万5千人の住民の生活改善に寄与するものである。

(2)上水管網におけるカメラ・モニタリング・システム
デ・ラ・イグレシア上下水道庁代表は、上水管からの漏水を検出し、即座に補修できるようにするためにはカメラ・モニタリングが必要で、米州開発銀行より融資される2億5千万ドルにより実現する考えを示した。現在、上水の50%が漏水している状況にあり、これを30%まで低減させようとするものである。

(3)トクメン空港第三滑走路の用地取得
トクメン国際空港公社は、同空港の第三滑走路用の用地取得及び貨物ターミナル付近における物流エリア建設の第一フェーズに必要な資金調達として、5月に2億25百万ドルの社債を発行する予定であることを報告。
 

6.経済指標は別添資料をご参照下さい。