パナマ経済(2017年5月報)

平成29年6月20日
在パナマ日本国大使館
担当:大森書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019

2017年5月のパナマ経済の主な動きを以下の通り報告する。

主な出来事
● 金融活動作業部会(FATF)は、15日から5日間、パナマの導入した対資金浄化、テロ及び大量破壊兵器への融資の取締りの枠組みの状況に関し、オンサイト査察を実施。
● ムーディーズ社はオデブレヒト社(伯)のスキャンダルによる国内メガプロジェクトの遅延を理由に、2017年のパナマの経済成長率を5.9%から5.4%に下方修正。

1 経済一般

(1)パイロット組合による賃上げ及び労働環境改善要求
2日、コパ航空に勤務するパイロット約1,000人が所属するパナマ・パイロット組合(UNPAC)はコパ航空と再度交渉を行ったが合意に至らなかった。
8日、ヤング事務局長は、コパ航空とUNPACが合意に到達する見込みが低い旨、また18日、労使間協議は継続するも、合意に至らない場合、6月15日にストライキを決行する旨発表。

(2)IMF査察によるパナマの評価
4日、IMFは3月に実施したパナマ査察の結果を発表。透明性及び取締りの強化に向けた取り組みは評価するも、今後の課題として、金融センターとしての機能を高めるためには、リスク管理及び危機管理体制の整備を進め、引き続き国際基準に沿った租税情報交換協定の締結を進めていく必要がある旨指摘。なお、2017年の経済成長率は5.1%になる見通しである旨発表。

(3)トクメン空港の免税品店
9日、ドゥバイ・トクメン空港公社総裁は、2018年からの空港内の免税品店のコンセッションに関する入札に向けた入札図書を承認した旨発表。同提案書の提出期日は6月30日の予定。現時点では、シンガポール、ドイツ、スイス、米、伯、イタリア、メキシコ、加、中国、コロンビア、チリ及び英国の各社がトクメン空港内での免税品店運営に関心を寄せている。

(4)トクメン空港拡張工事の進捗及び今後のマスタープラン
10日、トクメン空港公社は、現在工事が進む第二ターミナルの建設進捗状況は73%であり、2018年上半期には、3ゲートを稼働させる旨発表。現時点の建設予算額は、当初の6億7,900万ドルを大きく上回る9億ドルの見通し。なお、同工事請負業者はオデブレヒト社である。
30日、トクメン空港公社は今後のマスタープランを発表。2022年には利用客数が年間2,500万人まで拡大する予想を受け、2025年までに新滑走路を設置する必要があるほか、約10年後には、第三ターミナルを建設する必要があるとの内容を盛り込んだ。トクメン空港公社は、今年中に、新滑走路建設のための土地(700ヘクタール)の購入に向けた調査を開始する予定。

(5)金融活動作業部会(FATF)による査察
金融活動作業部会(FATF)は、15日から5日間、パナマの導入した対資金浄化、テロ及び大量破壊兵器への融資の取締りの諸措置の状況に関し、オンサイト査察を実施。サイン・マロ副大統領兼外務大臣は、「パナマは査察を受け入れる準備が出来ている。我々は、対策の必要性を充分に理解しており、租税回避対策に向けた充分な措置を講じている」旨発言。同査察団は、バレーラ大統領を始めとした政府関係者、金融機関や民間企業等との面談を実施。

(6)ルフトハンザ便就航1年後の評価
パナマとの直行便の就航開始から約1年が経過したルフトハンザ社は、パナマ・ベルリン便が常に約100%の搭乗率であり、需要が非常に高い旨発表。現在、利用客の約半数が、ショッピング、休暇及びビジネスを目的としてパナマを最終目的地としており、ニーズ次第では、現在の週5便から増便する可能性を示唆した。

(7)ムーディーズ社によるパナマの評価
大手格付け機関であるムーディーズ社は、2017年のパナマの経済成長率を5.9%から5.4%に下方修正。修正の要因として、オデブレヒト社(伯)のスキャンダルによる国内メガプロジェクトの遅延を挙げており、パナマは、ペルー及びコロンビアと並び、同社のスキャンダルによる悪影響が最も出ている国の一つである旨報告した。

(8)国際会議開催回数の増加
観光庁(ATP)は、本年5月までにパナマにて開催された国際会議(会期3日間以上)は43件であり、昨年1年間の84件を上回る見通しである旨発表。

(9)デル・モンテ社との農地契約
25日、バレーラ大統領は多国籍企業であるデル・モンテ社によるバナナ農園の開発に係る政府との契約に署名をした。投資金額は1億ドル、農園の広さは5,704ヘクタールであり、約3,100人の直接雇用を創出する見込み。

(10)バリ・シップ2017への参加
海事庁(AMP)は、25日~27日に今治市にて開催された「バリ・シップ2017」において、パナマ船籍登録に関するメリット、信頼性及び安全性を紹介するブースを構えた。なお今治市とパナマ市による姉妹都市協定締結40周年を記念し、同展示会には、バラカット海事庁長官等パナマの海事関係者が出席した。

2 経済指標、経済見通し等

(1)第1四半期のコンテナ取り扱い量
 海事庁(AMP)は、国内主要港湾におけるコンテナ取り扱い量が、前年同期比15%増の167万TEUであった旨発表。域内経済が不調であったものの、ここ二年間で最大の伸びを見せた。トローシュ海事会議所会頭は、2016年10月に発生したハリケーン・マッシューにて損害を受けたカリブ域内の港湾の代わりにパナマの港湾に貨物が集まっていることが最大の原因であると分析しており、今後、楽観視は出来ない旨発言。
 
(2)3月末の公的債務残高
 経済財務省は、3月末における公的債務残高額が、前月比440万ドル増の219億6,300万ドルであった旨発表。3月の米ドルの利上げの影響で円高になったことで、円建てのサムライボンドの借り入れ額が増額したことが主な要因。
 
(3)第1四半期の輸出額
 会計検査院は、第1四半期の輸出額は前年同期比6.4%増の1億5,400万ドルで、ここ4年間で初めてプラスに転じた旨発表。
 
(4)1~3月期の月間経済活動指数
 会計検査院は、1月から3月までの月間経済活動指数(IMAE)が昨年同期比6.03%増と発表。主に建設、鉱業、運輸・倉庫、通信、電気・水・ガス、ホテル・外食セクターにおいて成長が見られた。また、メトロ2号線建設、第3運河橋、道路拡張事業及びコロン市再生計画等において、建設及び鉱業が堅調な伸びを見せた。
 
(5)1~4月期の新車販売台数
 自動車販売協会(ADAP)は、本年1月から4月期の新車販売台数が、前年同期比13%減の1万8,886台と発表。数年間好調に伸びていた中の失速となった。失速の要因としてADAPは消費者の消費傾向に変化が見られてきていることを挙げ、2017年末の売り上げ台数は、前年比約10%減の6万台程度になる見込みである旨発表。

3 通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)伯産食肉の輸入解禁
 5日、食品安全庁(AUPSA)は、同国の取締り規制の不備を理由に3月21日から輸入を禁止していた伯産食肉の輸入を解禁した旨発表。
 
(2)韓国とのFTA発行に向けた進捗
 サラサル貿易産業次官は、当地大企業及び韓国パナマ友好協会の企業と面談をし、数ヶ月内に署名される予定の韓国とのFTA発効による利点や商機につき意見交換した。同次官は、本FTAの発効は商業の拡大及び多様化に繋がるだけでなく、両国に対する投資の拡大に繋がる旨発言した。6月中旬に韓国のビジネスミッションが来訪。
 

4 パナマ運河及びインフラ関連

(1)大型コンテナ船によるパナマ運河の通航
 24日、過去最大船型となるコンテナ船、OOCL France(船長約366m、船幅約48m、積載容量13,926TEU、運河通行料金約101万ドル)が通航。
 
(2)コロサル港の建設プロジェクト
 パナマ運河庁役員会は、入札が中断されていた同プロジェクトの評価を継続することを決定。
 
(3)アマドール・クルーズ・ターミナル建設プロジェクト
 2日、アマドールのクルーズ・ターミナルの建設事業の唯一の入札企業であったChina Harbour Engineering社(中)に対する評価が発表された。技術提案は580点中536点であった一方、経済提案は参考価格(予定価格)1億6,570万ドルを上回る1億9,730万ドルであったため、同社は受注するには、今後価格調整による提案価格の低減が必要となる。
 
(4)プンタ・チャメ・マリーナ開発プロジェクト
 Portones del Mar社が検討している同プロジェクトに関し、環境省が環境影響評価を承認。同プロジェクトは、2億7,500万ドルの投資により、403隻が停泊可能なマリーナの他、ホテル、商業施設及びコンベンションセンター等の建設が検討されている。
 
(5)メトロ3号線整備プロジェクト
 メトロ公社は、同プロジェクトに係る事前資格審査の提案の締め切りを6月2日に延期することを発表。その後、2018年上旬に受注者が確定し、同年5~6月頃に着工する見通し。
 
(6)ENA Oeste(西国立高速道路公社)の設立
 2日、ENA Oesteの設立が国会で可決された。同社は第四運河橋の運営とともに、8月に入札が予定されている同橋梁の建設事業への出資も担う見込みであり、今後、同出資を行うための法整備が進められる予定。
 
 

5 経済指標は別添資料をご参照ください。