パナマ経済(2017年4月報)

平成29年5月11日
在パナマ日本国大使館
担当:大森書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019

2017年4月のパナマ経済の主な動きを以下の通り報告する。
 
主な出来事
●15日、ピアポイント・コロン・フリーゾーン庁長官は、コロン・フリーゾーン内の各機能を統合するための拡張プロジェクトを発表。
 

1 経済一般

(1)OECDによる評価に向けた準備状況
 サイン・マロ副大統領兼外務大臣は、OECDに対してファスト・トラックレビューに正式に参加申請した旨述べた。同副大統領兼外務大臣は、「パナマは積極的に租税回避問題への対策を講じている。また我々の優先事項は、金融プラットフォーム及び国際サービスの強化を通じた競争力向上のための利便性を高めることである。右を目的とし、独立専門家委員会からの指摘事項を実行するための特別ユニットを強化した」旨発言した。今般のファスト・トラックレビューにより、G20及びEUにおける「差別的なリスト」(注:グレイリスト)に掲載されないことが期待される。
 
(2)観光庁による観光促進キャラバン
 観光庁(ATP)は、米国における観光促進キャラバン計画を発表。アトランタ、フィラデルフィア、ボストン及びNYの順に巡り、パナマの観光プロモーションを行う他、観光関連企業との商談が予定される。今後、同様のプロモーションを直行便が就航するドイツ及びスペインにて行う予定。
 
(3)IDBによる融資
 デ・ラ・グアルディア経済財務大臣は、西パナマ県の下水処理プロジェクトにIDBより1億5,000万ドルを受ける旨発表。
 
(4)ETESAの変電システムの交換
 4日、国営送電公社(ETESA)は、3月に発生した変電システムの爆発を受け、順次、新システムへの交換作業を進めていく旨発表。供給電力を爆発前のレベルに戻すまでの交換作業には約8~12週間を要する見込み。また停電により自家発電の稼働を余儀なくされた民間企業へ、損害を補填をする旨発表した。
 
(5)パナマ沿岸における石油及びガスの埋蔵量調査
 5日、国営送電公社(ETESA)は、パナマ沿岸の石油及びガスの埋蔵量調査を目的に、GX Technology Corporation(米)、Spectrum Geo, Inc. (ノルウェー)及びGeoex(英と米の合弁会社)と契約をする旨発表。契約額は8,700万ドル。ウルティアETESA前長官は「本調査はあくまで埋蔵量調査であり、採掘開発が約束されたものではない」旨発言。
 
(6)デル・モンテ社によるバナナ農園開発
 5日、デル・モンテ社(米)によるバナナ農園開発に関する契約法案が会計検査院にて承認され、17日に議会に提出された。本事業は、政府が複数農家より農地を借り入れ、農地開発をデル・モンテ社に委託する形態が取られる。投資額は最低1億ドル、契約期間は7年間。約3,100人の直接雇用及び約1,200人の間接雇用が創出される見込み。
 
(7)各国とのオープンスカイ協定の交渉状況
 民間航空局(AAC)は、オープンスカイ協定について、エジプト、エルサルバドル、インド、イスラエル、ヨルダン、ニュージーランド、ルクセンブルグ、オーストリア、フィンランド及び南アフリカと交渉中である旨発表した。またオーストリア航空がルフトハンザ航空とのコードシェアによるパナマ便就航に関心を示している旨併せて言及した。
 
(8)コロン・フリーゾーンの拡張計画
 15日、ピアポイント・コロン・フリーゾーン庁長官は、コロン・フリーゾーン内の各機能を統合するための拡張計画を発表。本計画にはココ・ソロ・エリアとココ・ソリート・エリアの統合及び税関機能の統合が含まれ、投資金額は約1,500万ドルが予定される。ピアポイント長官は、「本計画により、フランス・フィールドから遠距離にあることを理由に進出が進まないココ・ソリート・エリアへの移転が促進されることを期待する」旨発言した。
 
(9)コパ航空によるデンバー便の就航
 コパ航空は、米国内で13都市目となるデンバー便を、本年12月より週4便就航する旨発表。デンバー便はユナイテッド航空が2016年1月から就航していたものの、同年10月には廃止されていた。コパ航空は域内ハブ空港の特性を活かし、ラテンアメリカで冬期の旅行先として人気の高いデンバー便に期待すると発表。
 
(10)CEMEX社による投資
 CEMEX社(墨)は、パナマ・パシフィコ経済特区にて、セメント接着増強剤を製造する工場の稼働を開始した。同社は本工場設立のため1,500万ドル投資したと発表。
 
(11)パイロット組合による賃上げ及び労働環境改善要求
 27日、パナマ・パイロット組合は臨時総会を開催し、昨年10月から続くコパ航空社との協議で合意に至らない場合はストライキを決行することで全会一致した。パナマ・パイロット組には1,600人が所属し、うち1,000人がコパ航空に勤務する。
 
(12)ムーディーズによる格付け
 大手格付け機関のムーディーズ社は、パナマの格付けをBaa2、投資見通しを安定的と発表。特に政府が発表する公務員ポストの見直し(半減計画)を評価しているほか、2017年は運河からの収入も上昇傾向になるだろうという見通しを発表。

2 経済指標、経済見通し等

(1)2月期の基礎食料品バスケット
 経済財務省(MEF)は、パナマ市及びサンミゲリート市における2月期の基礎食料品バスケットは、前年同月比$2.11増の$307.50であり、郊外では前年同月比$3.42増の$282.62であったと発表。
 
(2)2月期までの新車販売台数
 会見検査院は、本年2月までの新車販売台数が、前年同期比12.2%減の8,768台であったと発表。特に下げ率が高かったのは、トラック(25.1%減)、ミニバン(23.9%減)、ピックアップトラック(21.9%減)、バス(15.3%減)及びセダンタイプ(14.9%減)。
 
(3)2016年の海外直接投資
 経済財務省(MEF)は、2016年の海外直接投資額が前年比15.9%増の52億930万ドルであった旨発表。内、再投資は66.5%であった。海外直接投資額が減少傾向にある域内において、パナマが増加傾向にある要因として、ドル経済、運河を中心とした整備された物流システム及び港湾、コロン・フリーゾーン、国際金融センター、ハブ空港及び各種インセンティブを挙げている。
 
(4)インフレの見通し
 経済財務省(MEF)は、2017年のインフレ率見通しを1.1%と発表。2018年、2019年及び2020年はそれぞれ1.8、1.9%及び1.7%になる見通し。なお、2016年は0.7%であった。
 
(5)一世帯あたりの月収
 経済財務省(MEF)は、2016年の1世帯あたりの平均月収は前年比7.7%(約$100)増の$1408.10だったと発表。都市部は$1685(前年7.1%増)、郊外は$752.7(同9.4%増)という内訳になった。また同年のジニ係数は0.485であったと併せて発表。
 
(6)3月期の公的債務額
 経済財務省(MEF)は、3月末期における公的債務残高額は210億6,400万ドルであったと発表。加えて、公的機関の負債額が22億7,900万ドル、またターンキーによる支払い残高は5億1,210万ドル。

3 通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)ブルガリアによるグレイリストからの削除
 外務省は、近年のパナマにおける租税回避対策の強化及び「租税に関する相互行政支援に関する条約」(MAC)への加盟を受け、ブルガリアはパナマを同国のグレイリストより削除した旨、発表した。

4 パナマ運河及びインフラ関連

(1)パナマ運河の通航実績
 2017年第1四半期(1~3月期)におけるパナマ運河通航料収入及び貨物量等の実績が公表され、通航料収入は565.5百万ドル(前年同期比16.6%増)、通過貨物量は63.9百万トン(同22.7%増)、通航船舶隻数は3,736隻(同4%増)であった。
 
(2)パナマ運河の水位状況
 19日、パナマ運河庁は運河の閘門開閉等に使用するガトゥン湖等の水量は十分に確保されていると発表した。運河の拡張プログラムにおける節水技術の導入や運河底の土砂の浚渫等による貯水容量の増大が功を奏したと見られる。
 
(3)コロン県における港湾及び発電所整備
 上海ゴージャス社(中)は、コロン県において年間250万TEUの取扱能力を有するコンテナターミナル・物流エリアの整備及び天然ガスを用いた火力発電所(2020年より350MWを発電予定)の開発に対し、計約18億ドルを投資することを発表した。いずれのプロジェクトも現在、環境影響調査中である。
 
(4)アマドール地区クルーズターミナルの整備
19日、アマドール地区クルーズターミナルの設計・整備事業の入札に係る事業者からの技術提案及び見積書の提出が締切られ、China Harbour Engineering(中)とJan de Nul(白)で構成されるコンソーシアムのみが提出した。提案に係る評価結果は5月2日に公表される。

5 経済指標は別添資料をご参照ください。