パナマ経済(2017年2月報)

平成29年3月15日
在パナマ日本国大使館
担当:大森書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019

主な出来事
2017年2月のパナマ経済の主な動きを以下の通り報告する。
 
主な出来事
● 16日、大手格付け機関であるフィッチ・レーティング社はパナマの格付けを「BBB」投資見通しを「安定的」と据え置きする旨レポートを発表。
● 10日、日本政府はパナマ政府より日本パナマ租税情報交換協定の発効に必要な内部手続きを完了した旨の通知を受理。これにより、3月12日より協定が発効する。

1 経済一般

(1)オデブレヒト社を巡る当国での動き
 3日、ウルティアエネルギー庁長官は、オデブレヒト社(伯)がコンセッションを有するChan2水力発電所建設プロジェクトに関し、コンソーシアムを解消した上で、同社のコンセッションを取り消すよう、政府に要請した旨発表。
 
(2)ヒューレット・パッカード社による拠点の設立
 7日、貿易産業省(MICI)は、コンピュータ関連製品企業であるヒューレット・パッカード社(米)が、コロン・フリーゾーン内に域内拠点を設立した旨発表。フリーゾーン内にて組み立て等作業を行った後、域内各国に流通される。コロン・フリーゾーン内にて組み立て作業を行うモデルでの企業進出はHuawei社(中)に次ぐ二件目。
 
(3)オデブレヒト社を巡るスキャンダルによるトクメン空港への影響
 トクメン空港公社は現在オデブレヒト社(伯)が進めるトクメン空港の拡張工事(進捗率:65%)に関し、今後同社による工事続行が難しくなった場合の対応とし、(1)25社のサブコントラクターをトクメン空港公社が直接管理する、(2)現在のサブコントラクターとトクメン空港公社の契約を継続しつつ、オデブレヒト社に代わってサブコントラクターを管理するプロジェクトマネージャーを見つける、及び(3)サブコントラクターとの契約も含めた新規の事業担当者を見つける、の3つの代替案を挙げた。
 
(4)フィッチ・レーティング社によるパナマ経済の格付け
 16日、大手格付け機関であるフィッチ・レーティング社はパナマの格付けを「BBB」投資見通しを「安定的」と据え置きする旨レポートを発表。パナマの経済が過去年間平均8%で推移し、大型インフラ事業及び鉱業セクターへの海外直接投資が活発であることを評価した。また昨年4月に公表されたいわゆる「パナマ文書」を受け、政府が取った迅速な対応が本文書公表による経済への影響のリスクを軽減したことに加え、マクロ経済へは影響がなかったと分析した。
 
(5)トクメン空港の利用度増の見通し
 トクメン空港公社は2030年までに利用客数が約2倍になる見込みであり、同利用客数増に対応するためには4つのターミナルが必要である旨発表。フィダンケ同公社総裁は、「現在建設中の第2ターミナルが完成次第、第三滑走路建設プロジェクトに着手する、投資額は約2億ドルになる見込み」と発表。
 
(6)一部関税の引き上げ
 21日、貿易産業省(MICI)は、木板、コーヒー豆、ペーパータオル、アルミニウム板、銅線及びケーブルの関税を3月15日より引き上げる旨発表。引き上げ幅については未発表であるものの、引き上げの理由として「国内産業保護」を挙げた。また同政令では、昨年8月に関税を引き上げた4品目(花、石炭、セメント、服飾)についても、2017年末まで同措置を延長する旨公布した。
 
(7)AES社によるLNG発電所建設
 23日、AES社(米)は同社がコロン沖にて建設中のLNG発電所の進捗率は30%であると発表。同プロジェクトの投資額は11億5,000万ドルで、発電所はジェネレーター(2機)、ガスタービン(3機)及び蒸気タービン(1機)を含み、381MWの発電が可能となる。
 
(8)ボーイング社によるコパ社への新機体納入
 コパ社は、2015年にボーイング社と購入契約を締結した65機(約66億ドル)のうち、5機が2018年に納入される予定である旨発表。
 
 

2 通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)コロンビアにおける再輸出品への課税を巡るWTOパネル
 (ア)9日、サイン・マロ副大統領兼外務大臣及びアロセメナ貿易産業大臣はカルタヘナ(コロンビア)にて、コロンビアと、パナマからの再輸出品に対する二重課税を巡る紛争の解決のための話し合いを行った。右会合にて両国は、今後のアクション・プランの作成に合意した。
 (イ)13日、パナマはWTOに対し、コロンビアに対する対抗措置として、(1)輸入関税の引き上げ、もしくは(2)2億1,000万ドル/年の損害賠償請求の申請を行った。
 
(2)IDB総会への出席
 9日、デ・ラ・グアルディア経済財務大臣及びサラック同次官は、ワシントンD.C.にて開催されるIDB総会に出席した。また7日、両名はモレノIDB総裁と面談し、第4運河橋建設プロジェクトを含む、パナマ国内のインフラプロジェクトにつき説明した。
 
(3)日本パナマ租税情報交換協定の発効
 10日、日本政府はパナマ政府より日本パナマ租税情報交換協定の発効に必要な内部手続きを完了した旨の通知を受理。これにより、3月12日より協定が発効する。なお本協定は、OECDの策定した国際基準である共通報告基準(CSR)に基づいた初の協定であり、日本とパナマとの間に国際的な脱税及び租税回避行為の防止のための租税情報交換の詳細な枠組みが構築される他、同行為の防止を狙いとした国際的な情報交換ネットワークの拡大にも資することが期待される。
 
(4)租税に関する相互行政支援に関する条約(MAC)加盟の議会承認
(ア)14日、「租税に関する相互行政支援に関する条約(MAC)」の加盟法案が議会にて承認された。同協定には現在23カ国が加盟をしており、デ・ラ・グアルディア経済財務大臣は、2014年10月より話し合いが重ねられていたコロンビアとの二重課税防止協定の発効は、本条約加盟によって解決された旨発言。
 (イ)11日、外務省は「租税に関する相互行政支援に関する条約(MAC)」加盟法案にバレーラ大統領が署名をした旨発表。
 
(5)フランスとの租税情報交換協定に向けた取り組み
 24日、外務省はフランスからの専門家チームがパナマを訪問し、二国間で発効している二重課税防止条約の確実な履行及び今後の租税情報交換協定締結に向けた話し合い、また現在問題となっている租税に関する課題解決に向けた話し合いを行った旨プレスリリースにて発出した。
 
 

3 パナマ運河及びインフラ関連

 特に無し 
 
 

4 経済指標、経済見通し等

(1)2016年の経常収入
 国税庁(DGI)は、2016年の経常収入が前年比5.8%増の73億8,980万ドルであったと発表。特に経常収入全体の73%を占める税収は、主に法人所得税の徴収額の急増(20.7%増)に牽引されたことで、同9.2%増した。
 
(2)11月末及び12月末の基礎食料品バスケット
 (ア)経済財務省(MEF)は11月末期におけるパナマ市及びサンミゲリート市における基礎食料品バスケットが$307.96であったと発表。右数値は前年比$4.55増であったものの、前月比$0.38減であり、4ヶ月連続の減少傾向にある。
 (イ)経済財務省(MEF)は12月末期におけるパナマ市及びサンミゲリート市における基礎食料品バスケットが、$307.99ドルであったと発表。前月比で微増を見せた背景には休暇時期にあたり、国民の食料品購入が増えたこと及び天候不順が農業に影響したことが挙げられた。
 
(3)2016年の便宜置籍船数
 海事庁(AMP)は、2016年にパナマ船籍として登録された船舶数は世界の商船の18%を占める、8,094隻(2億2,260万トン)であったと発表。便宜置籍船数が多い国は、パナマに次いで、リベリア、マーシャル諸島、香港、シンガポール他。またパナマ船籍登録件数が多い国順では、日本、トルコ、ギリシャ、シンガポール。
 
(4)2016年の国内主要港湾におけるコンテナ取り扱い量
 海事庁(AMP)は、2016年の国内主要港湾におけるコンテナ取り扱い量が前年比9.1%減の630万TEUであった旨発表。
 
(5)2016年の財政赤字
 会計検査院は2016年の財政赤字が前年比11.7%増の13億5,000万ドルであった旨発表。
 
(6)2017年のインフレ率見込み
 会計検査院は、原油価格の高騰により、2017年のインフレ率は1.1%になるだろうとの見通しを発表。なお2016年の同率は0.7%。
 
(7)2017年1月期の公的債務残高
 経済財務省(MEF)は、2017年1月末における公的債務残高額が218億5,250万ドルであったと発表。2016年12月末時の216億160万ドルから、2億5,080万ドル増であった。
 
(8)IMFによる域内経済の見通し
 IMFは2018年のパナマの購買力平価が2万5,712ドルでラ米域内1位になる見込みである旨レポートを発表。2位はチリで2万5,710ドル。また同レポートによると、2021年のパナマの購買力平価は3万902ドル、次いでチリ(2万9,221ドル)、ウルグアイ(2万7,215ドル)、アルゼンチン(2万4,232ドル)、メキシコ(2万2,970ドル)、コスタリカ(2万803ドル)、コロンビア(1万7,990ドル)と続く。
 
(9)経済指標は別添資料をご参照ください。