パナマ経済(2016年11月報)

平成28年12月16日
在パナマ日本国大使館
担当:大森書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019

主な出来事
● 2日~4日、ジョージアに於いて開催されたOECDグローバル・フォーラムのピア・レビュー会合において、パナマの租税情報交換の導入度合いは「まったく準拠していない」と評価された。なお、同評価は、2012年7月1日から2015年6月30日を評価対象期間としており、最近パナマがOECDの助言に基づいて推進した税の透明性への取り組みについて、評価対象とされていない。
●18日、パナマにおける金融制度の課題を分析することを目的として本年4月に設置された金融専門家委員会は、金融制度強化のための提言をまとめた報告書をバレーラ大統領に提出。
●23日、メトロ公社はパナマ首都圏都市交通3号線整備計画(メトロ3号線)工事のコントラクターに関する事前資格審査を公示。事前資格審査の応募締め切りは2017年2月15日、事業者は遅くとも2017年11月に決定し、工事着工は2017年下旬もしくは2018年上旬になる見込み。
 

1 経済一般

(1)運河庁による温室効果ガス削減のためのインセンティブ
1日、運河庁(ACP)は、温室ガス削減のためのインセンティブを発表。一定量のクリーンエネルギーを導入した船舶は、運河通航の順番予約を優先的に受けることが出来る。適用開始は2017年1月1日予定。
 
(2)OECDグローバル・フォーラムにおけるパナマの評価
2日~4日、ジョージアにおいて開催されたOECDグローバル・フォーラムのピア・レビュー会合において、パナマは租税情報交換の導入度合いが「まったく準拠していない」と評価された。同評価は、2012年7月1日から2015年6月30日を評価対象期間としており、最近パナマがOECDの助言に基づいて推進した税の透明性への取り組みについて、評価対象としていない。OECDグローバル・フォーラムは、右事情を踏まえつつ、「パナマは課題点を解決するための対策に取り組んでいた」ことを評価した。パナマは「ファスト・トラック制度」を使い、「租税に関する相互行政支援に関する条約(MAC)」への加盟を含め、2015年以降における税の透明性の確保に向けた取り組みにつき、2017年7月に再度評価される予定。
 
(3)金融専門委員会による報告書の提出
18日、パナマにおける金融制度の課題を分析することを目的として本年4月に設置された金融専門家委員会は、金融制度強化のための提言をまとめた報告書を提出。アレマン・スビエタ同委員長は、(本報告書では)「委員会の分析から導かれた提言をまとめた。透明性のある金融及び物流サービスを提供し続けるためにパナマがなすべきことを考慮した。今次報告書が、パナマにおける透明性のさらなる強化に貢献することを期待する」旨述べた。
 
(4)フランスへの報復措置発動の可能性
18日、バレーラ大統領は、12月31日までに仏が有する「非協力的な国リスト」からパナマを削除しない場合、明年1月2日より仏に対する報復措置を発動する可能性がある旨発言。サイン・マロ副大統領兼外務大臣は、「仏はパナマが二国間租税情報交換協定を遵守していないと主張しているが、パナマは右協定内容を遵守しており、仏は本協定で合意した以上の情報提供を求めている。仏が求める情報の提供は現時点ではパナマの国内法に抵触するため、提供することが出来ない」旨発言した。なお、在パナマ仏大使館は、同国にはタックスヘイブンとする国リストは存在しない旨発表している。
 
(5)フェリックス・マドゥーロ社の買収
18日、パナマ老舗デパートのフェリックス・マドゥーロ社は、アローチャ(パナマ)及びグルーポ・ディヌンサ社(ホンジュラス)による合弁企業であるFBM リーテール社による買収契約に合意した。
 
(6)カタールとの航空サービス協定の合意
19日、民間航空庁(AAC)は、カタールとの間で、パナマにとって30カ国目となる航空サービス協定の覚書を締結。AACは、現政権は海外との貿易活性化を政策の一つとして挙げており、国際航空便の充実はパナマの競争力を高め観光業を促進するため、経済成長に大きく貢献する旨発表。
 
(7)アルゼンチンとの覚え書きの署名
23日、サイン・マロ副大統領兼外務大臣は、アルゼンチン観光省との間で、観光促進を目的にした覚書に署名。今後、両国の観光の発展及び強化を目的に、情報及び知識の共有を行うことを約束した。また併せて、移民に関する覚書にも署名し、今後、情報共有のための枠組み作りを行っていくことで合意した。
 
(8)トクメン空港におけるテナントの入札
トクメン空港公社は、2017年12月に満期を迎える同空港内の免税品店のテナントにつき、2017年1月1日に入札を行う旨発表。同テナントには現在、モッタ・インターナショナルグループ社と、ワケッド・インターナショナル社が入居している。
 
(9)2016年度のコーヒー豆収穫量
会計検査院は、2016年度(2015年~2016年)のコーヒー豆の収穫量が前年同期比17.8%減(13万5,241キンタル)であった旨発表。引き続き中米で猛威を振るっているサビ病の影響を大きく受けた。なお農業開発省は、パナマから輸出されるコーヒー豆の90%はスペシャリティ・コーヒー、10%がオーガニック・コーヒーであり、主なマーケットは、米国(75%)、欧州(20%)、その他(5%)となっていると発表。
 
(10)多国籍企業本部制度(SEM)による新規企業進出
貿易産業省(MICI)は、新たに6社が多国籍企業本部制度(SEM)として認定されたと発表。右には、安藤・間(日)の他、Lala(墨)、Pandora(デンマーク)、Mondo Iberica(西)、Elbert Software(亜)、Estee Lauder(米)等が挙げられる。6社による合計投資額は約470万ドル、約150人の新規雇用創出が期待される。
 
(11)チリ企業によるビジネスミッション
21日より、チリの企業9社によって構成されたビジネスミッションがパナマを訪問。参加企業は、パナマの開放された市場及び技術の需要が魅力的であるとし、主に鉱業や建設業にてビジネスの可能性があるとしている。
 
(12)デル・モンテ社との契約
29日、デル・モンテ社(米)によるチリキ県におけるバナナ生産が閣議にて承認された。右交渉は、国境近辺である当該区域の土地を外国企業に転売することが憲法にて禁止されていることから難航したが、政府が土地所有者に対し、向こう20年間、年間7,500ドルを支払いデル・モンテ社へ転借することで合意に至った。デル・モンテ社による投資額は約1億ドル、約3,000人の直接雇用及び約15,000人の間接雇用を創出する見込み。
 
 
 

2 通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)サイン・マロ副大統領兼外務大臣とドミニカ共和国外相の会談
10月31日、サイン・マロ副大統領兼外務大臣は、来訪中のバルガス・ドミニカ共和国外相と会談し、パナマにおける金融取締りの強化並びに透明性の確保につき説明した上で、同国の「タックスヘイブン・リスト」からパナマを削除するよう要請した。バルガス外相はパナマ金融セクターの近代化に同意し、同リストからの削除を約束した。
 
(2)コロンビアの二重課税を巡る一連の動き
4日、バレーラ大統領は、コロンビアが引き続きコロン・フリーゾーンからの再輸出品に対し従量税及び従価税を課す旨発表したことへの対策につき議論する旨発表。またアロセメナ貿易産業大臣は、コロンビアによる右措置に対する報復措置の内容を検討するための特別委員会を設置した旨明かした。
 
(3)韓国・中米FTA妥結
16日に韓国・中米FTAが妥結したことを受け、アロセメナ貿易産業大臣は、韓国市場における通信業、海事業、観光業及び金融業におけるパナマ企業の市場アクセスが拡大する旨発言。なお右協定は、2017年6月30日までに署名がなされ、2018年1月1日に発効する見通し。
 

3 パナマ運河及びインフラ関連

(1)ガトゥン湖の水位回復
2日、パナマ運河庁は、ガトゥン湖の水位が最高水位(87.5フィート)に達した旨発表。また、8日よりガトゥン・ダムの放水を開始。
 
(2)メトロ2号線建設工事
12日、メトロ2号線建設工事の進捗は24%に達した。
 
(3)メトロ3号線の事前審査公示の開始
23日、メトロ公社はパナマ首都圏都市交通3号線整備計画(メトロ3号線)工事のコントラクターに関する事前資格審査を公示した。公示内容によると、12月6日に関心を有する企業による現場視察が実施され、翌7日にメトロ公社にて質問会が実施される。事前資格審査の応募締め切りは2017年2月15日であり、入札は総合入札を予定している。本件に関し、ロイ・メトロ公社総裁は、事業者は遅くとも2017年11月に決定し、工事着工は2017年下旬もしくは2018年上旬になる見込みである旨述べた。
 

4 経済指標、経済見通し等

(1)9月末における財政赤字
経済財務省(MEF)は、9月末における財政赤字額が前年同月比1億200万ドル減の9億1,100万ドル(対GDP比:1.9%)であったと発表。昨年比減少の主な要因として、税収の増大(直接税:12.9%増、間接税:5.0%増)を挙げた。なお財政責任法で定められた本年の対GDP比上限は1.5%であるが、デ・ラ・グアルディア大臣は、同法に基づき、対GDP比上限が引き上がる見通しである旨発言。
 
(2)10月末時の公的債務残高
経済財務省(MEF)は、10月末時における公的債務残高が前月比1億7,800万ドル減の214億1,100万ドルであったと発表。なお同額は前年同月比14億1,300万ドル増。
 
(3)9月末時の経常収入
経済財務省(MEF)は9月末時における経常収入が、48億9,630万ドルであったと発表。
 
(4)9月時における月間経済活動指数
会計検査院は9月の月間経済活動指数(IMAE)が、昨年同月とほぼ同率の4.1%であったと発表。右数値に関し経済専門家は、年間の経済活動指数については、詳細は述べられないものの、ポジティブな数値であると評価。なお、政府は2016年の経済成長率は5.6%になると予測。
 
(5)9月末時までのホテル稼働率
会計検査院は、1月から9月までのホテルの稼働率が48.0%であり過去最低率を記録した旨発表。また観光庁(ATP)は、パナマ来訪外国人は、米国、コロンビア、ベネズエラ、西及び伯等からの観光客が主であるとし、滞在期間は平均8.5日、支出額は平均$1,799(一日当たり$212)と試算結果を発表。
 
(6)経済指標は別添資料をご参照ください。