パナマ経済(2016年9月報)

平成28年10月6日
在パナマ日本国大使館
担当:大森書記官
TEL:507-263-6155
FAX:507-263-6019

主な出来事
● 21日、パナマ・米国間の外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)の発効に関する法律第363号が議会にて承認。2017年9月より適用予定。
● 船舶バラスト水規制管理条約の加盟に向けた法律第41号が官報に掲載された。本条約は2017年9月8日に発効の見通し。

1 経済一般

(1)本年1月~7月のトクメン空港公社収入
 トクメン空港公社は、1月~7月の期間の収入を前年比22%増の1億2,600万ドルと発表。収入増の要因として、本年1月に40ドルから50ドルに出国税が値上げされたこと、また、ルフトハンザ航空及びトルコ航空の就航に伴い、利用者数が増えたことを挙げている。
 
(2)大手格付け機関各社による評価
(イ)ムーディーズ社は、運河拡張工事、メトロ建設工事及び運河関連流通業がパナマ経済を牽引している旨発表。また併せて、パナマの経済成長の継続による財政赤字及び債務残高の縮減に応じて、今後格上げの可能性がある旨発表した。
(ロ)28日、スタンダード&プアーズ社はパナマの格付けをBBBに据え置き、見通しを安定的とするレポートを発表。同レポートにおいて同社は、パナマの力強い経済成長、縮減された財政赤字及び債務残高を評価した一方、政府は引き続き透明性に向けた取り組み及び租税情報交換協定の強化を推進する必要がある旨指摘した。
(ハ)フィッチ・レーティング社は、パナマの経済見通しに関するレポートを発表。レポート内では、力強い経済成長及び財政状況の改善を評価する一方、引き続き債務残高の改善には課題が残る旨指摘。またレポート内では、2016年における経済成長率が、BBB格付けがなされる他国の約2倍となる5.5%になる見通しである旨発表した。今後は、運河を中心とした港湾開発、交通及びエネルギーセクターへの投資及び財政の改善により、格上げする可能性がある旨示唆した。
 
(3)世銀による融資承認
 8日、世銀はパナマに、租税情報の透明化、金融の安定及び社会福祉プログラム等のため、3億ドルの融資を承認した旨発表。本融資の一部はエネルギー供給サービス及び教育プログラムに充てられるため、貧困層の60%の生活改善が期待される。教育分野では、パナマ・ビリングエプロジェクト(注:英語教育プロジェクト)や専門学校での教育の質向上のためのモニタリングが導入され、教育の効率化及び質の向上が期待される。
 
(4)中米経済統合銀行によるパナマ事務所設立
 中米経済統合銀行(CABEI)は、2016年にパナマからの拠出金の受け取りが開始したことを受け、2017年にパナマに事務所を設立する旨発表。同銀行は、ペノノメ県のウィンドーファーム及びメトロ2号線事業に対し、既に総額4億3,400万ドルの融資を行っている。
 
(5)イタリアとの租税情報交換協定に向けた協議開始
 9日、イタリアを訪問中のインカピエ外務次官は、ジロ外務副大臣との会談にて、両国間の投資活性化、ビジネスを通じた関係強化及び租税情報交換協定に向けた協議の開始につき協議した。また同外務次官は、カセロ財務副大臣との会談し、パナマが「租税に関する相互行政に関する条約(略称:税務行政執行共助条約/MAC)」に近日中に加盟を予定している旨説明した。
 
(6)FATCA開始に向けた動き
 21日、4月27日にパナマ・米国間にて署名された「外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)」の発効に関する法律第363号が議会にて承認された。年内に全ての国内手続きが完了した場合、同法は2017年9月より適用される予定。
 
(7)農業開発大臣によるイスラエルでの農業開発センターの視察
 26日、カルレス農業開発大臣は、イスラエルを訪問し同国の農業技術研究所、農業専門学校及び下水処理場を視察した。パナマは同国から農業技術協力を受ける予定である。
 
(8)財政責任法の改正予定
 27日、経済財務省(MEF)政策局は、財政責任法の改正法案を次期議会に提出する予定である旨発表。主な改正内容は、財政委員会の設置及びパナマ貯蓄銀行からの資金の流れの改正である。右改正は、いずれもIMFの提案に基づく。
 
(9)世界競争率ランキング
 世界経済フォーラムが発表する世界競争率ランキングにおいて、パナマは昨年から8ポイントアップの42位(138カ国中)にランクインした。ラ米域内ではチリ(33位)に次ぐ第2位であり、主に金融マーケット(12位)、安定したマクロ経済(16位)、インフラ整備(36位)が高く評価された一方、教育水準(86位)、政治制度(70位)及び労働市場(67位)が低い評価を受けた。

2 通商、自由貿易協定、国際経済関連

(1)「船舶バラスト水規制管理条約」の加盟
 19日、海運庁(AMP)は「二千四年の船舶のバラスト水及び沈殿水物の規制及び管理のための国際条約(略称:船舶バラスト水規制管理条約)」の加盟に向けた2016年9月12日付法律第41号が官報に掲載された旨発表した。世界の商船腹量の約19%を有するパナマの加盟により、本条約は2017年9月8日に発効の見通し。
 
(2)中米・韓国FTA交渉
 26日~30日、マナグアにおいて中米6カ国と韓国によるFTAの第6回交渉ラウンドが開催された。本ラウンドでは、市場アクセス、原産地規定、国内市場保護、サービス投資及び政府調達等につき協議がなされた。

3 パナマ運河及びインフラ関連

 パナマ運河(第三閘門)通航船舶(自動車運搬船)
8日、8,500台の自動車を搭載可能なネオパナマックス・サイズの自動車運搬船「Hoegh Target号」(船長:200m、船幅:36.5m、2015年建造、船籍:ノルウェー)が拡張パナマ運河を通航。また、16日、「Carouge号」(船長:288.97m、船幅:45m)が初の穀類等運搬船(ドライバルク船)として拡張パナマ運河を通航。

4 経済指標、経済見通し等

(1)6月末時の基礎食料品バスケット
 経済財務省(MEF)は6月末時における基礎食料品バスケットが、前年比7.13ドル増の307.10ドル(パナマ市内)であったと発表。
 
(2)上半期の経済成長率
 15日、会計検査院は上半期の経済成長率が4.9%であったと発表。建設業(9%増)、金融仲介業及び不動産業が経済成長を牽引した一方、輸送業、倉庫業及び通信業が失速した。なお第2四半期単期の経済成長率は5.2%であり、4.6%を記録した第1四半期を上回った。
 
(3)8月末時における債務残高
 15日、経済財務省(MEF)は8月末時における債務残高が、216億6,700万ドルであったと発表。1年前と比較し、17億7,000万ドル増となった。
 
(4)上半期の海外直接投資額
 16日、会計検査院は、上半期の海外直接投資額が前年同期比1億8,400万ドル(6.5%)増の30億1,900万ドルであった旨発表した。このうち、59%が再投資及び22%が海外企業による国内企業の買収であった。業種別では、海外企業による国内企業の買収が16.1%増えた一方、金融業(国際ライセンス)への投資が45.2%減、コロンフリーゾーンへの投資が25.7%減となった。
 
(5)1~7月期のコンテナ取り扱い量
 海運庁(AMP)は、1~7月期における国内港湾のコンテナ取り扱い量が、前年同期比12.4%減であった旨発表。キハーノ運河庁(ACP)長官は、世界経済の成長伸び率が2%未満と非常に鈍いため、国際的な貨物の移動が少ないことが要因である旨説明。
 
(6)7月期における月間経済活動指数
 会計検査院は7月までの月間経済活動指数(IMAE)が4.1%であったと発表。民間企業がコロン県にて進める銅鉱山開発の影響による鉱業及び建設業が経済を牽引した他、発電所の建設により活動が拡大した電気・水分野、また倉庫業及びホテル・外食業が好調な伸びを記録した。
 
(7)1~7月期の新車販売台数
 会計検査院は1~7月期の新車販売台数が、昨年同期比6.8%増の3万8,746台であったと発表。
 
(8)経済指標は別添資料をご参照ください。