パナマ経済概況

令和5年4月13日

1.2022年基礎データ(出典:会計検査院)

1.2022年基礎データ(出典:会計検査院)

人口:       4,395,414人 (確定値)
 
GDP:       名目76,522百万ドル
          実質73,449百万ドル *基準年2018年
 
GDP成長率:     名目13.5%
          実質10.8%
 
インフレ率:    2.9 %
 
期末債務残高:  44,274百万ドル(名目GDP比率57.8%)
 
経常収支:    -2,051百万ドル
 
輸出品FOB    3,646百万ドル / 輸入品CIF 11,520百万ドル
 
海外直接投資:   589百万ドル
 
期末失業率:    10.3%
 
2.財政状況(出典:経済財務省,会計検査院)

政府予算:   27,579百万ドル (2023年度期首予算)
 
経常収支:   -2,051百万ドル(名目GDP比率-3.0%)(2021年度)
 
3.2021年主要貿易相手国と主要貿易産品

輸出国:      中国、日本、韓国、スペイン、インド
輸入国:      米国、中国、メキシコ、コスタリカ、コロンビア
 
輸出品:      銅、バナナ、エビ等魚介類、金属くず、砂糖、魚粉・魚油
輸入品:      ガソリン等燃料類、自動車、医薬品、鉄鋼製品、住宅用建材
 
4.自由貿易協定FTA締結国(2023年4月時点)

エルサルバドル、シンガポール、チリ、コスタリカ、ホンジュラス、グアテマラ、ニカラグア、米国、カナダ、ペルー、メキシコ、欧州連合、欧州自由貿易連合、イスラエル、英国、韓国、コロンビア(批准凍結)
 
5.主な国際加盟機関

中米統合機構(SICA)、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)、米州機構(OAS)など。太平洋同盟には正式加盟予定国としてオブザーバー参加。
 
6.経済の特徴

(1)通貨はバルボアだが、為替は1バルボア=1米ドルで固定されており流通紙幣は米ドル。自国通貨による為替変動がないため、地域の金融センターとして機能している。かつては、海外企業によるオフショアカンパニーの設立が盛んに行われていたが、2016年の「パナマ文書」以降、金融の透明性を国の最重要課題のひとつとして、登録会社情報の適正な管理に焦点を当てた法律制定など取組を強化している。しかし、2019年6月、パナマは金融活動作業部会(英名FATF/西語GAFI)が指定する資金洗浄・テロ資金対策で戦略的欠陥を有し改善が奨励される国としてグレーリストに追加された。政府は国際金融市場での信頼性を損なわないよう、グレーリストからの早期脱却に向けたアクションプランを掲げ、法整備や技術面の改良を推進している。
 
(2)南北アメリカ大陸の結節点という地理的な優位性と、国際海上交通の要衝であるパナマ運河を有する利点を活かし、国際ハブ空港(トクメン国際空港)や海上貨物の中継貿易拠点(パナマ運河の両端に構える港湾、コロン・フリーゾーン)を通じた観光業、海事産業の他、2000年代初頭からは海外資本が流入し高層ビルの建設ラッシュとなり建設業が隆盛した。その後、2010年代に入ると大型公共インフラプロジェクトが着工され、湾岸道路シンタ・コステラ(2014年整備完了)、メトロ1号線(2014年開業)、パナマ運河拡張(2016年開通)、メトロ2号線(2019年開業)、が次々と完成した。一方、同期間を経て債務が大幅に増加。2015年末に202億ドルだった債務額が、2019年末は310億ドルまで膨らんだ。実質GDP成長率も2010年以降は毎年5%以上で堅調だったが、2018年は3.7%、2019年は3.0%と、引き続き中南米地域では高い経済成長率を維持しているものの成長率に陰りが見えてきた。2020年は新型コロナウィルス感染拡大の影響により、国内では外出制限が敷かれ消費が低迷。また、海外からの観光需要が蒸発しサービス業が打撃を受けた他、建設業も停滞して成長率は過去最低の-17.6%(基準年:2018年)に落ち込んだ。同時に財務状況も急激に悪化し、2020年~2022年にかけてのコロナ禍での経済対策及び、2022年2月のロシアのウクライナ侵攻に起因した世界的なインフレ対応における補助金、給付金等により、2022年末の債務残高は過去最高の442億ドルにまで膨れ上がった。他方で、斯様な厳しい経済状況下、銅の輸出と運河を含む海事産業、コロン・フリーゾーンを中心とした商業は好調でパナマ経済を下支えして、GDP成長率は中米・カリブ海地域トップクラスの15.8%(2021年)、10.8%(2022年)となった。また、パナマ政府は、経済復興に向けてメトロ3号線(円借款事業)を含む大規模な公共インフラ事業に着手している。
 
(3)貿易収支は恒常的に赤字である。輸出に関しては、2019年からパナマ銅山で採掘された銅の輸出が始まり順調に生産を伸ばしているが、銅以外の主要輸出産品は農産物・海産物といった生鮮品や加工品原料が中心で、国際市場における価格競争が激しい。政府は、ゲイシャコーヒーに代表されるようなパナマ産品のブランディングやニッチ市場への売込み、デジタルプラットフォームを通じた取引業者のマッチングなど、輸出促進に力を入れている。また、外貨獲得の一環として海外からの企業誘致に取組んでおり、税制面を優遇した多国籍企業本部制度(通称SEM制度)や旧米軍ハワード空港施設跡地に設立したパナマパシフィコ経済特区への誘致を積極的に行っている。また、2020年8月から製造業の誘致を目的とした多国籍企業製造サービス制度(通称EMMA制度)が始まった。今後はコロン・フリーゾーン等への製造業の進出が期待されている。
 
(4)経済や雇用を支えるうえで海事産業も重要な役割を果たしている。2021年12月末時点のパナマ船籍登録隻数は8,023隻(約230百万トン)で、これは世界の登録船舶のうちトン数ベースで15.5%以上を占める。また日本の商船隊は隻数ベースで、53.6%がパナマ船籍であり、船籍国別割合ではパナマ船籍が突出して高く、日本との海事分野における繋がりが深い。
 
(5)日系企業の進出は1960年代から盛んになり、2022年10月時点で約44社が現地法人や駐在員事務所を構えている。主にコロンフリーゾーンからの再輸出業務やラテンアメリカ地域の業務統括拠点として活動している日系企業が多い。